「思いやり」は最高のクリエイティブだ
おはようございます、カメラマンの下山です。
本日発売のRUN+TRAIL vol.31の表紙の撮影をさせていただきました。
フォトグラファーにとって、撮影した写真が雑誌の一面表紙に使用されるというのは憧れであり、しかもランプラストレイルは僕の趣味でもあるトレイルランニングの専門誌。
こんなに嬉しい事はありません。僕にとって、仕事として最高の出来事です。最高に光栄で、ありがたい事です。本当に嬉しいです。
今回の撮影で思うことがあったので、書き留めておこうと思います。
事前にランプラストレイル の鈴木編集長から、
「今日の撮影では表紙の写真を狙っています」
と事前に伝えられていました。
もうこれだけで嬉しくてありがたいのですが、正直かなりのプレッシャーでした。
自分が表紙に耐えれるクオリティーの写真を取れるのだろうか、、。
僕は人物撮影を得意としていますが、どんな撮影においても自信を持って、絶対にいい写真、「100点の写真」は撮る事は出来ません。
こんな発言はプロとして失格かもしれません。
でも僕は、「人物写真」というのは本当に難しく、「100点の写真」というものはありえないと思っています。
写真はある程度は自分の思うような配置で、切り取る事が可能かもしれませんが、目の前にあるものしか撮れません。
またそこに「人」というものが関わってくると、僕が思うようには写真に収めることが出来ません。
何故ならば人間は、他人をコントロールする事はできません。被写体になる方とのコミュニケーション、イメージを共有し、協力して頂く事が本当に大事です。
100点を目指す写真であれば、「こんな風に写真が撮りたい」ということを被写体に伝える。
そもそも、「100点の写真」とは、「こんな風に撮りたい」という写真とはなんだろうか。
表紙の写真とは、どんな写真なのか。
それは僕が想像するには、雑誌の顔であり、それはより多くの方に手にとってもらうために魅力的な写真。トレイルランニングというスポーツの楽しさが伝わって、いいなと思う写真。
ここで気をつけておきたいのは、僕が思う「100点の写真」と、他の人が思う100点の写真はきっと違うという事。
僕一人で「100点」を目指しても、それは僕目線だけのものであって、間違いなくいい写真は撮れません。
撮影では皆さんとの共同作業になります。
撮った写真をiPadに転送してイメージを確認し合いながら撮影を進めました。
今回の表紙になったカット、鈴木さん親子のお二人が手を広げてジャンプしているイメージは、鈴木編集長のアイデアです。
何度か走ってもらって、iPadでみて確認し、もっとこうなったらいいんじゃないか、お父さんと娘さんの顔が重ならないように、少し横にずれたほうがいいんじゃないか、とにかく笑顔で!とか。僕と編集長は思いつく限りの事をお伝えしました。
撮った写真を見てもらい、さらにいいイメージを親子のお二人に持ってもらい、何度か走って、ジャンプしてもらう。
そんな共同作業を進めていくうちに、この奇跡的な一枚は撮れました。
僕の想像では親子の顔が斜めに重なるイメージがあったのですが、僕の予想とは反して、顔がきれいに縦に並ぶ写真が撮れて、しかも表情も抜群によくてフォームもきれい。
この写真が撮れた瞬間、「これはすごい!」と思って、そしてそれを皆で確認したときも大いに盛り上がりました。
そしてこの写真はセレクトされて、表紙にデザインされ、見せてもらった瞬間、鳥肌が立ちました。
なんて素敵な表紙なんだろう!と思いました。
この表紙は共同作業をする中、皆が思いやり、化学反応を起こした結果です。
どんなに頑張っても、自分一人だけでは自分の思いつく100点の写真までしか撮る事は出来ません。しかも写真では実際には100点には届かない。
今回のこのランプラストレイルの表紙は僕にとっては想像以上の結果、120点の結果を出せたと思っています。
鈴木編集長がイメージしていたものに近い、もしかしたらそれ以上の写真をお届け出来ました。
お互いの事を想像し、思いやることで、想像を超えた、もっといい結果を出せる。
「仕事」とは、人と人とのコミュニケーションで成り立っているなとつくづく感じました。
おわり。
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