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2020-07-13

ブックレビュー「世界は贈与でできている」

世界は贈与でできている
近内悠太


「僕らは他者から贈与されることでしか、本当に大切なものを手にすることができないのです。」

「誰にも頼ることのできない世界とは、誰からも頼りにされない世界となる。僕らはこの数十年、そんな状態を自由と呼んできました。」

もし、あなたにとって本当に大切なものはなんですか?と、聞かれたら何て答えるだろう。それは自分ひとりだけでは手に入らないものが多いのではないでしょうか。


私たち人間は、産まれてからすぐに贈与という愛を受け取っていた。それなしでは生きてこれなかった。しかしそれに気づかないまま生きていき、死んでいくのかもしれない。。

贈与とは無駄に思えても、長く人と過ごして、よく観察し、人を思いやること。人を慮って想像すること。合理的でなく不合理なものにこそ愛が隠れていて、それに気付く知性がなければ人に与えることはできないという。

僕は最近まで都心の近くに住み、自分の力でもっと自由に生きていく。そう言って、面倒な付き合いをやめ、無駄なことを捨てて、たくさん働いて、たくさん稼げるようにと、便利なことや生産性、効率化ばかりを追い求めてきた。東京で時間を切り詰めて働き、慌ただしく生きていて、それはどんどん加速していきました。


しかし今思えばそれは、自分に理解できないものを切り捨て、知ることを放棄していました。あまりにも自分勝手な生き方だったのではないかと反省しています。

当たり前だと思っていたこと。自分が成し遂げたと思っていたこと。それは全て贈与によって成り立ち、多くのものは誰かに与えられていたものだった。

自分でやらなければ気がすまなかった。見ているつもりで、見ていなかった。思いやりがなかった。想像力が足りなかった。

もっと人に寄り添い、気づきたい。他者と共に生きていきたい。

今までこんなことは無駄だと思っていたことに、もっと時間をかけてみてもいいのかもしれない。

都心を少し離れてみて、今までの生き方、人との接し方を変えてみたいと思っています。

本書の認知症になった母親の毎日16時の徘徊に困り果て、実は息子である自分の幼い頃、幼稚園のお迎えの時間だったというエピソードに涙しました。

温かくて素敵な本でした。気付きをありがとうございました。

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